@article{oai:chuo-u.repo.nii.ac.jp:00007399, author = {平野, 健}, journal = {経済研究所 Discussion Paper, IERCU Discussion Paper}, month = {Feb}, note = {application/pdf, 本稿の課題は、現代アメリカの実体経済の特質を過剰資本の観点から明らかにすることにある。  戦後アメリカ経済の変遷、すなわち「黄金の1960年代」から新自由主義への転換と1980年代以降の新自由主義の中での変遷をその深部において規定している基盤は、製造業とりわけ重化学工業の資本蓄積運動である。重化学工業は20世紀半ばのアメリカ経済にとってその成長を支えるリーディング産業であったが、半世紀の間にその生産力(生産能力と労働生産性)は大きく成長し、そのことが重化学工業のリーディング産業としての機能を低下させた。そうした傾向に抗うように、戦後は1950年代~60年代~70年代とケインズ主義政策を徐々に拡大していくが、それが結果として製造業の過剰生産能力を堆積させ、それが利潤率を圧迫するようになる。  製造業は「旺盛な設備投資による生産能力の増強-過剰生産能力の発生-その堆積-その削減」というサイクルを「1960-1970-1980年代」と「1990-2000年代(未完)」という2つの時期で描いている。しかし、1980年代の過剰生産能力削減は設備稼働率を大きく改善するには至らず、また1990年代の生産能力増強は1960年代をも超える水準だったため、設備稼働率はこの2循環を通して長期低落傾向を貫いている。その意味で、製造業の過剰生産能力という問題は1966年以来、今日まで貫かれる長期的・傾向的問題である。  利潤率は「利潤分配率」「設備生産性」「設備稼働率」の3つの要因に分解できるが、過剰生産能力の堆積(設備稼働率の低下)が終始一貫して利潤率を押し下げ続けるので、「利潤分配率」と「設備生産性」を押し上げることで利潤率を回復する動きが1980年代から始まる。その具体的な姿が、リエンジニアリング、リストラクチャリング、オフショアリングである。そこでは、①雇用の柔軟化、労働力の部門間移動、海外の低賃金労働力の利用を通じて「労働分配率」を引き下げ、②M&A&Dによる企業資産の獲得、他部門(IT産業やビジネスサービス業)の設備投資による製造業の生産性上昇を通じて「設備生産性」を引き上げた。  1991~2001年と2001~2009年の景気循環は、どちらもバブルの影響によって大型好景気となったが、その基盤にある製造業の資本蓄積の動向に規定されて大きく性格の違うものとなった。1990年代前半は製造業自身の設備投資と生産拡大とが自分の中で好循環を起こして景気拡大し、それが過剰生産能力を発生させた後は、ITバブルを背景とした通信業とビジネスサービス業の設備投資と雇用拡大によって景気拡大が継続された。とはいえ、通信業もビジネスサービス業もともに製造業や金融業の競争力強化策の支援産業として成長しているので、これらのベンチャー企業の株式が投機の対象になることは自然な成り行きであり、投資銀行が特別な努力を重ねる必要はなかった。しかし2000年代になると製造業の過剰生産能力の堆積とオフショアリングにより実体経済は停滞し、これという成長産業も生まれなかった。そうした下で業界劣位にある投資銀行が自ら大きなリスクを取ることで引き起こしたのが住宅バブル、住宅モーゲージ関連証券バブルであった。その結果、バブル崩壊の際に発生する危機が2001年とは全く異なるものとなり、2008年金融恐慌を引き起こすこととなった。}, title = {過剰資本と現代のアメリカ経済}, volume = {263}, year = {2016}, yomi = {ヒラノ, ケン} }